本文へジャンプ 2005年4月5日更新 

 

故意について

 犯罪の認定に当たり、故意の用件は欠かすことができません。ひらたく言えば、故意にやったものでなければ犯罪にはならないのです(業過=業務上過失・・・はどうなる?という無駄な突っ込みはしないように)。これは粉飾決算に限らず、犯罪の立証上の大原則です。テレビの犯罪もののドラマの殆どは、犯人の犯行に到る動機と目的の解明、つまり犯人がなぜ、何のためにこの犯行を犯すに到ったのか、がテーマとなっていますが、要はこれを解明しないと故意の立証ができないのです。
 犯罪の立証なんて厳しいことをいってるんじゃない、と思っている皆さん、粉飾決算というのは計算間違いではないのです。あくまで誰かをだまそうと思ってやるものなのです。見抜くの項でも書こうと思っていますが、粉飾決算を見抜くためには、粉飾の動機と目的いうものに対する理解が絶対に必要なのです。



粉飾決算の動機
 では、粉飾決算の動機にはどんなものがあるのでしょうか?
 企業には様々なステークホルダー、つまり利害関係者がいますが、会社の決算数値はこれら利害関係者にとって、様々な理由で大事なものです。たとえば 株主にとって、決算が黒字であることは、株価の上昇をもたらすとともに、配当受け取りの基礎になりますから、当然に関心を持ちます。
 金融機関や一般の債権者にとっても、会社の決算数値は債権回収が滞りなく行われるか否かを判断するため、関心を持っています。
 特に建設業者については経審の関係があり、行政も決算数値に関心を持ちます。
 株式を買おうとする投資家にとって決算書は、株式の購入を検討するに当たって最も重要な資料です。 
 従業員は会社の業績を就職や退職、転職の判断材料にしたり、動機付けに使用します。 こう考えていけば分かりやすいのではないかと思うのですが、粉飾決算というのは、要はこういったステークホルダーのうち誰か、あるいはその全員をだますために行われるのです。つまり
株主をだますため・・・配当維持、黒字の仮装 
金融機関をだますため・・・返済能力があるように仮装 
債権者をだますため・・・信用の維持 
行政をだますため・・・経営基盤が強固であるように仮装 
従業員をだますため・・・会社の業績に問題がないかのように仮装 
ということです。皆さん当然お気づきのことと思いますが、ステークホルダーのうち税務当局だけは他のステークホルダーとは反対のベクトルを持っています。業績を過度に低く見せるための粉飾を『逆粉飾』といいますが、このうち特に税務当局をだますためのものは、『脱税』そのものとなります。

何のために粉飾決算を行うのか

 それではいったい何のために粉飾決算は行われるのでしょうか?誰かをだますためといいましたが、誰を何のためにだますのか、これが粉飾決算の目的です。ただ、株式公開会社の場合、『誰を』だますのかという点については、突き詰めていくと難しい問題があります。『何のために』という点とあわせて考えみなければなりません。

配当維持

 新聞に大々的に掲載される大型の粉飾決算の場合、普通商法第489条第1項第3号の『違法配当』罪が適用になります。これは会社が配当可能利益を超えて配当を行った場合に適用される罰条ですが、この配当可能利益というのは決算書(貸借対照表)の数値をもとに計算されるもので、配当可能利益がないことが決算書上明らかなのに、あえて配当決議を行うというのは実際のところちょっと考えられません。
 つまり会社の業績が悪化し、実際には配当可能利益がないことが分かっていながらあえて利益配当を行うためには、決算書の数値を真実のものとは違うものにし、配当可能利益があるように装わなければなりません。

コベナンツ

 聴きなれない言葉だと思いますが、これは『財務制限条項』と訳されます。金融機関その他の債権者との間で、融資等信用供与の条件を緩和する代わりに、一定の業績水準の達成を義務付けることをいいます。漢字だらけで分かりにくいのですが、たとえば赤字になったら追加の担保を要求する、といったようなケースです。バブル期、大手企業は『無担保社債』を多く発行しましたが、発行の際受託会社(今の社債管理会社の役割を負う)との間で、格付けBBB(トリプルBと読む)を維持できない場合、無配の場合、担保を差し入れる、といった条件を付していました。従って、会社とすれば、格付け維持のために会社の業績をよく見せる必要が生じたわけです。


経営審査

 行政の仕事を元受しようとする建設会社は、この『経営審査』を受ける必要があり、この評点は入札資格等を得るにあたってのランク付けにあたり重要な指標となります。
 このうちX2(自己資本額及び職員数評点)とY(経営状況評点)、とくにYは決算数値から直接導き出されますので、業者側ではこの評点を高めるため、会社が良好な業績を維持しているように見せかけます。
 この経営審査の有無にかかわらず、行政は入札資格を判断する際に決算書の提出を求めますが、行政は『黒字であること』を入札資格の最低基準とすることが多く、提出する側はとにかく黒字の決算書を出さなければならない、と考えます。


支払い能力の仮装

 ここからは一般論になるのですが、会社の債権者は、当然自分たちの債権が問題なく回収できることを望んでいます。これは決算書を提出する側も分かっていますから、債権者が安心する決算書、取引の停止、ないしは返済を求められない決算書を作成しようとするのです。


安全性の仮装と債務の圧縮

 支払い能力と関係しますが、金融機関からの借り入れが多いと、なかなか新たな融資を引き出せないと思い、あるいは借り入れシェアのバランスが取れるように、借入金の額を圧縮するケースがあります。


対従業員

 会社の従業員も、自社の業績には重要な関心を持っています。従業員に危機感を抱かせるため、あるいは安心させるため、若干の赤字を出した決算書を見せたり、あるいは多額の損失を隠した決算書を見せたりします。


ちなみに

 これらが総て犯罪として検挙されているわけではありませんが、実際にこんな目的で粉飾決算は行われます。次の『真実と異なる』というキーワードを読み解く際にもこの目的は重要です。

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